ニックス対スパーズ(Knicks vs Spurs)のNBAファイナル、シリーズは2勝0敗。そして今夜のG3は、ある"確率"を背負った試合になります。その数字が、86.5%。
ファイナルで2-0と先行したチームは、過去37チーム中32が優勝してきました[1]。割合にすると86.5%。逆に0-2から這い上がって優勝したのは、長いNBA史でたった5回だけです。
第3戦は現地6/8、舞台はニューヨークのMSG(ニックスの本拠地)。ここで勝てば3-0になり、その3-0は、もっと重い数字を連れてきます。今日はその"確率の正体"を、戦術とコーチの目線も交えて見ていきましょう。
まず、ここまでの流れをおさらいします。会場ローテーションはG1・G2がサンアントニオ、G3・G4がニューヨーク。つまりニックスは、ファイナルの最初の2試合を"両方アウェイ"で戦って、両方勝ち切ったわけです。
これ自体が史上3チーム目の珍事でした。並ぶのは1993ブルズと1995ロケッツだけ。しかも両方、その年に優勝しています(1995ロケッツに至ってはスイープ優勝)。
そのニックスが、今日からホームのMSGに帰ってきます。スコアはG1が105-95、G2が105-104の1点差。連勝の数字も伸びていて、プレーオフ連勝は現在13。これは単一プレーオフで史上2位の記録です[3]。
1位は2017ウォリアーズの15連勝(優勝した年)。今夜勝てば14、G4でスイープすれば15で、あの歴史的なウォリアーズに並びます。ついでに言うと、ロード(敵地)8連勝は2001レイカーズと並ぶ最長タイ。あらゆる縦軸に、もう手をかけている状態です。
ここが今日いちばん書きたいところ。86.5%という数字の本当の重みは、その先の「3-0」にあります。
NBAのプレーオフ史で、3-0のリードをひっくり返して逆転されたチームは、一度もありません[2]。3-0になったシリーズは160回以上ありますが、そのすべてで先行した側が勝ち抜けてきました。0勝3敗から4連勝、という劇的なやつは、まだNBAでは生まれていない。
つまり今夜のG3は、ニックスにとって「勝てば優勝がほぼ確定する試合」。確率の言葉でいえば、2-0の段階で86.5%だったものが、3-0になると限りなく100%に近づきます。たった1勝の重みが、ここまで違う試合はそうありません。
ではスパーズはどう戦うか。G1とG2を振り返ると、構図ははっきりしています。G1はWembanyamaがFG6-21(FG=フィールドゴール、29%)と効率を落とし、ニックスはBrunson30+Towns18+Anunoby17の分散で勝ちました。「個人を止めて、仕組みで勝つ」という形です。
G2はWembanyamaが29-9と復調。Townsが21-13、Brunsonが20点+5スティール、Bridgesが20点。それでも結果は1点差でニックスでした。エースが戻った試合でも、ニックスの"仕組み"が1点ぶん上回った──それが2試合の結論です。
ここで1つ、戦術の話から少し角度を変えます。今夜のいちばんの見どころは、スパーズの戦術以上に「ニックスがファイナルのホーム初戦をどう迎えるか」だと思っています。
まず数字を置きましょう。ニックスは今季、MSG(ホーム)でレギュラーシーズン30勝10敗(.750)、プレーオフは6勝1敗(.857)[4]。本拠地ではきっちり勝ってきたチームです。ただし、ファイナルのMSGは今夜が初めて。G1・G2はどちらも敵地でしたから、"ファイナルの大舞台×ホーム初戦"という組み合わせは、このチームにとって未知の場面になります。
子どもたちを見ていても、大きな舞台の「初戦」は別物です。いつも通りやれる子もいれば、応援の声が大きいほど力んで、簡単なプレーを外す子もいる。ホームの数字がどれだけ良くても、"初めての場面"だけはフタを開けるまで分からない。
だから今夜の見どころはシンプルです。ニックスが初戦の重圧で硬くなるのか、それともMSGの勝率どおり、いつもの力を出すのか。G1・G2で勝ってきた"分散で崩す"形を、ホームの熱の中でも淡々とやれるか。そこに尽きます。
連勝13、と聞くと「すごい」で止まりがちですが、中身を見るとさらに怖い。ニックスは今プレーオフ、ほとんどの試合を大差で勝ち上がってきました。接戦を競り勝った13連勝ではなく、相手を突き放してきた13連勝です。
そこにG2の105-104が乗りました。"大差で勝つ"形しか持っていなかったチームが、「1点差の薄氷でも勝てる」という引き出しを1つ増やした。勝ち方の種類が増えるのは、シリーズ終盤にじわじわ効いてきます。
スパーズの修正点もはっきりしています。Wembanyamaが良くても噛み合わなかった「3人目」の問題。彼以外で、もう一人が大きな数字を出さないと、ニックスの仕組みを1点差で超えるのは難しいでしょう。逆にそこが噛み合えば、G3でシリーズの流れを変える芽はあります。
整理しましょう。ニックスが今夜勝てば3-0。NBA史で3-0から逆転された前例はゼロですから、優勝はほぼ確定的になります。連勝も14に伸び、2017ウォリアーズの15連勝が射程に入る。
スパーズが勝てば2-1。86.5%の数字は残りますが、シリーズはまだ分からなくなります。0-2から逆転した5チーム(1969セルティックス・1977ブレイザーズ・2006ヒート・2016キャバリアーズ・2021バックス)の仲間入りを目指す、最初の1勝になるはず。
私の見立ては、ニックスが"いつもの形"を淡々とやれれば押し切る、です。鍵はWembanyamaの出来そのものより、MSGの熱の中でニックスが雑にならないか。この予想が当たったか外れたかは、明日のG3リキャップで答え合わせします。
ティップオフはJST6/9の朝9:30。通勤前のひと試合、確率の重みを頭の片隅に置いて見ると、1点1点の意味が変わって見えてくるんです。
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