ミニバスのコーチを3年やっています。練習で「お手本になる選手の映像を見せて」と言われると、私はいつも少し迷うんです。だって、上手い選手なんて山ほどいる。でも私が選ぶ基準は、たぶん人とちょっと違う。「上手いかどうか」じゃなくて、「子どもの土台になる動きが入っているかどうか」で選んでいるんです。
今日は、私が子どもに見せたいと思っている2人──Luka Dončić と LeBron James──の話をさせてください。NBAの分析というより、コーチとしての私の見立てに近い、ゆるいコラムです。
映像を見せる目的って、「すごいプレーに憧れさせること」だと思われがちなんです。もちろんそれも大事。でも私がもっと大事にしているのは、子どもが「自分の体でも真似できる部分」を見つけられるかどうか。
派手なダンクは憧れにはなっても、ミニバスの子の練習にはすぐ繋がりません。逆に、地味だけどあらゆるプレーの土台になっている動き──そこに目を向けさせたい。だから私は、難しいプレーの中に「基礎」がちゃんと入っている選手を選ぶようにしているんです。
最初に見せたのは Dončić でした。理由は、彼の難しいプレーの中に、必ず「ヒンジ」する動作が入っているからです。
ヒンジ(hip hinge)というのは、股関節を軸にして上体を前に倒し、お尻を後ろに引く動き。背中はまっすぐ保ったまま、体の後ろ側にある大きな筋肉(お尻ともも裏)に力をためる姿勢のことです。スクワットで膝を曲げるのとは少し違って、「股関節で折りたたむ」イメージ。これがジャンプや切り返しの力の源になります。
このヒンジ、私はドライブとシュートの両方に必ず入ってくる要素だと思っているんです。Dončić のステップバックを見てみてください。ドライブで相手をぐっと後ろに下げさせてから、急に減速して、後ろに抜けながら打つ。あの「急に減速する」瞬間こそ、股関節に力をためてブレーキをかけている場面なんです。ためた力を、今度はシュートや次の動きに変える。彼の場合、それが一連の流れの中に自然に組み込まれている。
もちろん、これは「コーチである私の見立て」です。Dončić のシュートを精密に分解した話ではありません。ただ、子どもに「ここを見てごらん」と指さすには、彼のプレーがちょうどいい。ヒンジが自然に作れるようになると、止まる・ためる・はじけるが一つになって、いい選手になっていく。私はそう信じています。
このヒンジ、子どもにどう教えるかは正直まだ試行錯誤の途中です。最近は「太ももとお腹をくっつけよう」って言っています。専門用語で正しいのかは分かりません。でも、声に出して伝えてみて、効いてるか検証して、続けて、また直す。この「検証・継続・改良」を私はずっと回しています。自分でいいと思ったことは、まずどんどん取り入れてみる。コーチとしての私のやり方は、たぶんそこに尽きるんです。
ちなみに映像を見せたら、子どもたちはやっぱり真似しだしました。特にステップバックスリー。かっこいいですからね。ただ正直に言うと、あれは私がいま「求めているプレー」ではないんです。最後の最後、ここぞの場面で出してくれたら最高だな、くらいに思っている。とはいえ、本人がやりたいんだから無理に止めはしません。見守りながら、心の中でこう願っています──「そのプレーだけじゃないぞ。そこからいろんなプレーができるようになってほしい」と。
もう一人は LeBron。こちらはまだ子どもには紹介できていません。理由は、彼から学んでほしいのが「動き」じゃなくて「判断」だからです。
LeBron を見ていて私がいちばん面白いと感じるのは、「なぜ、そのプレーを選んだのか」を考えるところなんです。パスか、シュートか、もう一歩待つか。彼の選択を見ながら、「自分ならどうするか」「なぜ彼はこっちを選んだのか」を頭の中で答え合わせする。
正直、私の答えが合っているかは分かりません。でも、その「判断の深さを想像する時間」がすごく楽しいんです。バスケの面白さって、体の動きだけじゃなくて、こういう頭の中の選択にもあるんだよ──そういうことを、いつか子どもたちに伝えたいと思っています。
ただ、判断を語れるようになるには、まず体の土台がいる。だから順番としては、Dončić のヒンジが先。LeBron の判断は、もう少し先のお楽しみ、というわけです。
「上手い選手」を見せるのは簡単です。でも「この子の土台になる選手」を選ぶのは、コーチの仕事だと思っています。土台の Dončić、判断の LeBron。私の中では、この2人がちゃんと地続きなんです。次にNBAを見るとき、選手の派手さの裏にある「ためる動き」と「選ぶ理由」を、少し意識して見てもらえたら嬉しいです。
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