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戦術分析

±59 ── サンダー対スパーズ WCF Game 4、Wemby が下がる29分の「設計の欠落」

公開日2026.05.25編集部 · 5 min
戦術分析NO. 17
±59
WEMBY ON/OFF

サンダー対スパーズ(Thunder vs Spurs)のWCF Game 4は、シリーズ 1勝2敗 で追い込まれた SAS が、ホーム・Frost Bank Center で迎える第2戦です。SASのレギュラーシーズン Frost Bank Center 成績は 32勝8敗。ホームは強い。ただ、NBA史上 3-0からの逆転は0チーム。今夜落とせばOKCの優勝確率は99%超に跳ねます。

象徴は Wemby On/Off ±59 です。Wemby出場時は +21(125分)、不在時は -38(29分)。この差59が、SASの構造的な歪みを物語っています。

この記事では、±59を「代役の弱さ」ではなく 設計の欠落 として読み解きます。G3でWembyは39分プレー=休憩はたった9分。その9分をどう組み替えるかが、ホーム第2戦の勝敗を決めます。

この記事のポイント
  • Wemby On/Off ±59 は「代役の弱さ」ではない──出場時+21・不在時-38の差59は、Luke Kornet個人の問題ではなく SAS の 2nd unit が設計されていないこと の表れ。
  • G3の Wemby 39分プレーは限界設計──休憩はたった9分。残りの29分(試合通算)の崩れ方を見れば、ベンチ時間の組み替えが必須だと分かる。
  • G3 OKCベンチ76点 vs SAS 23点は対比図──OKCの2nd unitは「設計図」、SASの2nd unitは「設計の欠落」。同じシリーズで真逆の構造が並走している。

背景──G3 で見えた「OKC ベンチ76-23・史上最多」と SAS の課題

シリーズは OKC の 2-1 で動いています。G3(5/24・OKC)は OKC 123-108 SAS。前回のG3リキャップで深く扱ったのは、OKCベンチが 76点、SASベンチが 23点 の差53点という数字でした。これは 1970-71 集計開始以来のカンファレンスファイナル/ファイナル単独最多 です。

OKC側はベンチが 「設計されている」。McCain 24点、Jaylin Williams 18点(3P 5/6)、Caruso 15点、Wallace 11点──スター抜きの時間帯でも、誰かが必ず役割を遂行する構造になっています。

では、SAS側はどうか。Wemby は 26点・39分。ただし、Wemby が コートに居ない9分 の崩れ方が、勝敗以上に深刻でした。これを言語化したのが、今夜の本題=Wemby On/Off ±59 です。

データブロック①──WCF Game 3 のキー数値とWemby関連

■ 最終スコア:OKC 123 - 108 SAS/シリーズ OKC 2-1
Wemby On/Off:+21(125分)/-38(29分)/差 59
■ Wemby(SAS):26点(8/15 FG・2/5 3P・8/10 FT)・4REB・3AST・2BLK・39分
■ Wemby G1-G3 得点推移:41 → 21 → 26
■ バックアップ Luke Kornet(SAS)G3:-18
■ ベンチ得点:OKC 76 - SAS 23(差53点/集計開始以来 CF/F 単独最多
■ SGA(OKC):26点・12AST・2TO(6/17 FG・12/12 FT)
■ OKCベンチ内訳:McCain 24/Jaylin Williams 18(3P 5/6)/Caruso 15/Wallace 11
■ Castle(SAS):14点・7AST(1/8 FG・FT 11/14)
■ Fox(SAS):15点・31分(今シリーズ初戦/復帰戦)
■ Harper(SAS):6点(G3でベンチへ降格)
■ Wemby本人コメント:「I feel like I have trouble making my teammates better right now ... I need to be more of a team player」

詳細分析──±59 は「代役の弱さ」ではなく「設計の欠落」

ここがこの記事の本丸です。Wemby On/Off ±59 を運営者がどう読んだかを、過程込みで書きます。

まず、よくある誤読パターンから外します。「Wemby 不在時に Luke Kornet が-18だから、Kornet が悪い」──これは 違う んです。On/Off は個人能力指標ではなく、そのユニットがどう設計されているかを映す数字なんです。

SASのオフェンスは、Wemby のペイント威圧(プルアップを引き受ける長身+ロブの的)と、それが生む 外周のスペース に依存しています。Wemby が居ると、ペイントは"空く"。3Pラインの外でボールが回り、ドライブレーンが開きます。これがWemby出場時の +21 の正体です。

では、Wemby が下がる29分(試合通算)で何が起きているか。ペイントが詰まる んです。Kornet はリムプロテクターとして優秀でも、外に引き出してスペースを作るタイプではない。結果、OKCはダブルチームを Castle や Fox に寄せる余裕ができ、トランジションで一気に走られる──これが 不在時-38 の中身です。

ここで もう1段深く 読みます。これは「Kornet を別の選手に替えれば解決する」問題ではありません。Wemby が居ない時間帯の attack flow そのものを、SASが設計していない んです。「Wemby のコピーを置く」発想で動くから、できないのは当然。代わりに、Wemby が居ない前提のフローを別建てで組む必要があります。

ここで小さなコーチ補助線を1本だけ。ミニバスを3年見ていて分かるのは、エースが下がる5分の設計がチームの勝敗を決める という当たり前の事実です。エースが居る20分で20点取れても、居ない5分で15点取られたら勝てない。プロも同じで、Wemby が居ない29分をどう切り抜けるかは 「Wemby の問題」ではなくコーチングの問題 なんです。

運営者の読み方を一度まとめると、こうです。±59 は Wemby の偉大さの裏返しではなく、SAS の 2nd unit が "設計されていない" ことの証拠。G4 で見たいのは、Sochan・Bassey をプリミティブにペイントへ置く、Castle にハンドラーとしてフローを任せる、Wemby 出場を「39分・1回休憩」から「24分前半・2-3回に分割」へ刻み直す──こうした 設計の組み替え が起きるかどうかです。

もう少し具体に踏み込みます。Wemby を24分前半でつなぐ場合、必要なのは 「Wemby 不在時の3〜5分パッケージ」 を2〜3種類用意することです。たとえば「Sochan を5番に上げて Bassey と並べる小さめユニット」「Vassell+Castle で外周のショットクリエイトに振るユニット」など。Wemby の代わりを1人で埋めようとするから-38になる。役割を3人で分担する設計 なら、不在時のスコアは少なくとも-10前後で踏みとどまります。

連続性──G3 リキャップ「ベンチ76-23=OKCの設計図」の対比

前回のG3リキャップで書いたのは、こうでした。「OKCのベンチ76-23は、Daigneault HC の 2nd unit 設計図が完成している証拠」。McCain・Caruso・Wallace・Jaylin Williams が、SGA/Holmgren が下がっても 同じ強度でオフェンスを回せる。

このG3リキャップを書き終えた後に見えてきたのが、その裏返し です。同じシリーズの SAS 側で起きていたのは、2nd unit の設計が無い という構造でした。OKCの76と SASの23が並んで、ようやく ±59 の意味が立体的に見えます。

つまり、このシリーズは 「設計された2nd unit」vs「設計されていない2nd unit」 の対戦でもあったわけです。スター対決(SGA vs Wemby)の裏で、コーチング設計の差が静かにシリーズを動かしていました。G4 で SAS が組み替えに動くか──ここが分水嶺です。

データブロック②──Game 4 関連数値

■ G4 ティップオフ:JST 2026-05-25 9:00(San Antonio・Frost Bank Center・ABC放送)
■ SAS レギュラーシーズン Frost Bank Center 成績:32勝8敗(ホーム強い)
■ NBA史上 3-0からの大逆転は 0 チーム(過去154例/0%)
■ 今夜OKC勝利時の優勝確率:99%超(歴史上ほぼ確定)
■ インジュリーレポート(SAS):全員 healthy
■ インジュリーレポート(OKC):Jalen Williams questionable(左ハム/OUT寄り)/Ajay Mitchell OUT/Thomas Sorber OUT
■ Wemby 出場時の SAS Net Rating:+21(125分)
■ Wemby 不在時の SAS Net Rating:-38(29分)
■ Luke Kornet(SASバックアップ5)G3:-18
■ Fox 復帰戦(G3):15点・31分──G4で先発・時間延長の可能性

サブトピック──SGA「12アシスト」の指揮者モード

±59 と並んで、G3でもう1つ見落とせない数字が SGAの12アシスト です。MVP級のスコアラーが 26点に抑え気味で、アシスト12、ターンオーバー2。これは「得点を取りに行く SGA」ではなく 「指揮者モードの SGA」 でした。

この指揮者モードが、OKCベンチ76点と直結しています。McCain や Jaylin Williams が 気持ちよく撃てるパスを SGA が配っている。スター個人の得点で勝つのではなく、スター抜きの時間帯でも回る 仕組み をSGAが作っている。これも「設計」の表れです。

SASに置き換えれば、Wemby が 指揮者モード に踏み込めるか、という問いになります。本人コメント「I feel like I have trouble making my teammates better」は、Wemby 自身がこの課題を認識している証拠。G4 で Wemby のアシストが 5本以上 に伸びれば、設計面の進展が見えます。

ここで地味に効いてくるのが、復帰戦で 15点・31分 を出した Fox の存在です。Foxはハーフコートの1on1で点を取れるガード。Wemby が居ない時間帯に Fox を残せば、ペイントが詰まってもドライブで切り裂ける選択肢が増えます。Castle と Fox を 並べる時間 を作れるかも、G4 の隠れた見どころです。

今後の展望──G4 で見たい3つのサイン

G4でSASファン・中立ファンが見るべきサインは、3つです。

1つ目は Wembyの出場時間配分。G3の「39分・休憩9分」型を続けるのか、「24分前半・2-3回に分割」 型に切り替えるのか。後者なら、ベンチ時間の崩れ方が変わる可能性があります。

2つ目は Sochan・Bassey の起用法。Wemby ベンチ時に Sochan か Bassey をプリミティブにペイントへ置けるか。「Wembyのコピー」ではなく 別タイプのインサイド として運用できれば、フローが組み替わります。

3つ目は 第3Q。OKCは第3Qの試合をする習慣がついています。G3の第3Qで開いた点差が決定打でした。SASが ホームの後押しで第3Qを互角に抜けられるか──ここが勝敗の最終決定点になります。

シリーズは 1-2、確率の上では崖。ただ、SASが 「±59 は設計で詰められる」 と気づいて動けば、ホームで1勝取り戻す目はあります。0%は史上0チームの数字ですが、今夜の1勝はまだ十分に現実的です。

今日の1つの持ち帰り はこれです。On/Off は代役個人の能力ではなく、ユニット設計の鏡。±59 を「Kornetが悪い」で片付けるのと「設計の欠落」で読むのとでは、見える景色がまるで違います。G4 のSASローテーション、特に Wembyがコートを離れる瞬間 に注目してみてください。

JST 9:00、Frost Bank Center にABCの中継カメラが入ります。今夜のSASは、「Wemby の偉大さ」ではなく「コーチングの設計」 で勝ちにいく夜になるはずです。

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