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データ分析

32% vs +17.3 ── スパーズ対ニックス Finals、3Pを「仕組みで消す」か「個人で当てる」か

公開日2026.06.04編集部 · 6 min
データ分析NO. 02
32 vs 17.3
SYSTEM vs STAR

同じ「3P勝負」なのに、片方はオープン3を消す、片方はオープン3を当てる。── これ、対戦カードとして地味に見えて、実はものすごく対照的なんです。

日本時間6月4日の朝、ついにNBAファイナルのGame 1がティップオフします。カードはスパーズ対ニックス(Spurs vs Knicks)。両者がファイナルで顔を合わせるのは、スパーズが初優勝した1999年以来、27年ぶり2度目のリマッチです。

これまでの2本で、僕はニックスの「盾」とスパーズの「矛」を別々に描いてきました。ニックスは相手のオープン3を32.0%[1]に抑える守備、スパーズはWembanyamaがコートにいると+17.3[1]になるチーム。今日はその盾と矛を、いよいよぶつけます。

この記事のポイント
  • 同じ3P勝負の正反対 ── ニックスは「仕組み」でオープン3を消す(32%)、スパーズは「個人」で3Pを当てる(+17.3)。撃ち合いではなく設計思想の対決
  • マッチアップの肝 ── ニックスのクローズアウト網に、シュートの78%が3PのChampagnieという「矛」が刺さるか。ここがシリーズの一番の見どころ
  • 7戦の問い ── 長いシリーズで折れにくいのはシステム(NYK)か個人(SAS)か。中9日 vs 中2日の休養差も伏線

背景と文脈

まず、この2チームの正体を一行ずつで。ニックスは「誰が出ても相手のオープン3を32%に抑える」システムの極致。スパーズは「Wemby一人がいると+17.3、下がると-0.3」という個人依存の極致。前2本で見た通り、設計思想が真逆なんです。

準決勝のリキャップでは「総合力のスパーズ vs 個別最適のサンダー」という構図を整理しました。でもファイナルでは、相手がニックスに変わったことで、構図そのものが「システム vs 個人」に組み替わります。同じスパーズでも、ぶつかる相手で見え方が変わるのが面白いところ。

今季の直接対戦も整理しておきます。レギュラーシーズンは2試合で1勝1敗。大晦日(2025/12/31)はスパーズが134-132で逆転勝ち、3月1日はニックスが114-89で快勝しました。これとは別に、12月のNBAカップ(カップ戦)決勝でもぶつかっていて、そこはニックスが124-113で制し、球団史上初のカップ戦優勝を飾っています。リーグ戦は痛み分け、カップ決勝はニックス、という関係です。

データブロック①:盾と矛を並べてみる

■ ─────── 盾=ニックス(仕組みで消す) ───────
■ 相手のWide-open 3許可率:32.0%(リーグ通常値 37.8%)[1]
■ =守備者が6フィート以上離れた「ほぼフリーの3P」を、リーグ最低水準まで抑えた
■ Tracking era(追跡データ時代)のカンファレンスファイナリストで最低水準
■ プレーオフのリム周辺(制限区域)試投:29.6本/試合(全PO球団トップ)・成功率 68.1%
■ ペイント内得点:53.3点/試合(全PO球団トップ)(※対スパーズ限定ではなくPO全体)
■ ─────── 矛=スパーズ(個人で当てる) ───────
Wemby ON時 NetRtg:+17.3 / OFF時:-0.3[1](個人依存度リーグ最大級)
■ Wemby:史上初の満票DPOY・史上最年少22歳
■ Wemby:準決勝Game1で12ブロック=プレーオフ単一試合 史上最多[2](従来記録10本)
Champagnie:PO で打つシュートの78%が3P・キャッチ&シュート成功率 約50%
■ ─────── その他の文脈 ───────
■ スパーズは今季守備効率リーグ3位。だが今季ニックス相手には全対戦相手の中で最も多く失点
■ Finals G1までの休養:スパーズ 中2日 / ニックス 中9日

3Pの主導権は、仕組みで握るか・人で握るか

ここからが、この記事の一番伝えたいところ。同じ「3Pが勝負を分ける」シリーズなのに、両者のアプローチがまったく逆なんです。

まず数字から。ニックスの32.0%は「相手にオープン3を打たれても、それが入らない」という守備側の数字。対してスパーズの+17.3は「Wembyという個人がいると勝てる」という攻守一体の数字で、その攻撃の入口になっているのがChampagnieの3P(シュートの78%が3P)です。片方は3Pを消す数字、片方は3Pを含む個人で押し切る数字。土俵が違うんです。

なぜこうなるのか。ニックスは特定のエースに頼らず、Wingのローテーション全体で「オープンに見えて実はオープンじゃない3P」を作っています。誰が出ても同じ密度が保てる。一方スパーズは、Wembyがリムを消し(準決勝Game1で12ブロック)、Champagnieが外から当てる、という個の才能の足し算で点差を作る構造。だからWembyが下がる数分で-0.3まで落ちるわけです。

では、これが何を意味するか。これは3Pの撃ち合いではなく、「設計思想の対決」です。ニックスの仕組みが、スパーズの個の才能を上回るのか。それとも、規格外のWembyとChampagnieが、仕組みをこじ開けるのか。シリーズの軸はここに尽きます。

少しだけ、僕のコーチの話をさせてください。ミニバスでチームを作る時、大きく2つの道があります。「全員で守る約束事(システム)」を仕込むか、「規格外の子1人に託す」か。3年コーチをやってきて痛感するのは、短いトーナメントで本当に強いのは、まずシステム型だということ。エースの調子に左右されず、誰が出ても崩れないチームは、勝ち上がりが安定するんです。

でも、例外もある。託せる規格外の子が1人いれば、個人型でも勝ち切れる試合がある。その子がコートにいる時間だけで、相手を置き去りにできてしまう。これ、まさにWembyの+17.3そのものなんです。

ファイナルは7戦の長丁場。僕の実感では、7戦シリーズで折れにくいのはシステム(ニックス)です。でも、Wembyほどの規格外がいるなら、個人型(スパーズ)でも勝ち切れる。この「システムか、個人か」という問いに、僕は今からワクワクしています。

データブロック②:今季ぶつかった試合が教えること

2025/12/31 スパーズ 134-132 ニックス(スパーズが逆転勝ち)[3]
■ → 主役はChampagnie 36点・3P 11本成功(球団記録)=個人が爆発した日
■ → Wembyは31点13リバウンドで負傷退場・Brunson 29点
2026/03/01 ニックス 114-89 スパーズ(ニックスが快勝)
■ → 25点差=システムがかみ合った日
2025/12/16 ニックス 124-113 スパーズ(NBAカップ決勝)
■ → ニックスのカップ戦初優勝(※リーグ戦の通算には含めない別枠)
■ ─────── 読み取れること ───────
個人が爆発するとスパーズ/システムがかみ合うとニックス

この3試合、きれいに法則が出ています。スパーズが勝った大晦日は、Champagnieが36点・3P 11本という個人の爆発でもぎ取った試合。逆にニックスが勝った2試合(3月のリーグ戦+12月のカップ決勝)は、特定の誰かではなくチーム全体がかみ合った勝ち方でした。

つまり、今季の対戦そのものが「個人が当たればスパーズ、システムが回ればニックス」という、このシリーズの設計思想の対決を先取りしていた、というわけです。

Finals Game 1で見るべきサイン

では、Game 1で具体的に何を見るか。3つに絞ります。

一つ目は「スパーズの最初のオープン3が入るか」。これが入れば、ニックスの32%という盾が、これまでより格上の相手にも本物かどうか、最初の試金石になります。逆に序盤の数本が「あれ、入らない」となれば、仕組みがファイナル規模でも機能している証拠です。

二つ目は「Champagnieの最初の3本」。シュートの78%が3Pという矛が、ニックスの盾に最初のヒビを入れられるか。彼の3Pが序盤から決まれば、スパーズの個人型は息を吹き返します。外れ続ければ、攻撃がWemby一人に集中していく。

三つ目は「Wembyがベンチに下がる数分+終盤の疲労」。+17.3 / -0.3が本物なら、Wembyが休む時間にニックスが点差を動かす場面が必ず来ます。しかもスパーズは中2日、ニックスは中9日。第4クォーターのWembyの動きの重さは、テレビ越しでも見えるはずです。

今後の展望

結局この7戦は、システム(ニックス)と個人(スパーズ)、どちらが折れずに最後まで保つかに収れんします。僕の実感ではシステムが安定する。でも、Wembyという例外が、その常識を覆すかもしれない。そこが見どころです。

連覇が生まれない時代に、27年ぶりに巡ってきた「久々の顔」同士の対決。盾と矛、どちらの設計図が正解だったかは、シリーズが終わる頃にわかります。Game 1の入りだけでも、その輪郭は見えてくるはず。明日の朝、コーヒー片手に最初の数分を眺めてみてください。

出典

[1] 相手 Wide-open 3許可率 32.0%/リーグ通常 37.8%・Wemby ON時 NetRtg +17.3/OFF時 -0.3:ESPN「The on-court trends defining the 2026 NBA playoffs」(Zach Kram・2026-05-26)。元データ GeniusIQ(NBA公式トラッキング)
[2] Wemby 12ブロック=プレーオフ単一試合 史上最多(従来記録10本):NBA.com
[3] 今季の直接対戦スコア(12/31 スパーズ134-132・3/1 ニックス114-89)・Champagnie 36点/3P 11本・1999年以来27年ぶりのリマッチ:ESPN/CBS Sports/NBA.com
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