ニックス対スパーズ(Knicks vs Spurs)のNBAファイナルGame 5が、現地6月13日(日本時間6月14日・日曜の朝)にサンアントニオで行われます。シリーズはニックスの3勝1敗。スパーズは、ホームで落とせばそこで終わりという崖っぷちに立った。
原因はGame 4の後半にある。前半に76点を叩き出したスパーズが、後半はわずか30点[1]。27点あったリードを丸ごと溶かし、107-106で敗れました。
ただ、私はこの崩壊を「ただの悲劇」として書くつもりはありません。後半の30点には、原因がはっきり数字で残っている。直せる場所が見えているなら、逆襲の条件も書けるはず。今日はそこを解剖します。
Game 4の前半、スパーズは完璧を超えていた。第1Qだけで41-22。この19点差は、ロードチームがファイナルの第1Qでつけたリードとして史上最大でした。
3Pは前半だけで26本中14本(53.8%)[2]。NBAファイナル史上、1ハーフでの最多3P成功記録になる(従来記録は2017年キャバリアーズの13本)。ハーフタイムのスコアは76-49、その差27点。
ところが後半、同じチームが30点しか取れない。第3Qが14点、第4Qが16点。最大29点差(第3Q途中の81-52)からの逆転負けは、ファイナル史上最大です。
マディソン・スクエア・ガーデンが爆発し、スパーズは沈黙した。107-106。たった1点差で、シリーズの景色が3-1に変わった。
色の意味はシンプルで、緑はリーグ平均より高効率、赤は低効率。前半はコート全体が緑に染まり、後半はほぼ全域が赤に沈んだ。この2枚を見比べるだけで、崩壊の規模が伝わるはず。
ゾーン別で一番重いのはリング下。前半8/10(80.0%)だったのが、後半は2/13(15.4%)まで落ちた。一番確率が高いはずの場所で、最も大きく崩れている。
数字を並べると、前半と後半で別のチームになっている。FGは59.6%から20.5%へ。ただ「シュートが入らなくなった」だけなら確率の揺り戻しで片付くけれど、この表にはもっと重い行が2つあります。
1つ目は「TO9個>成功FG8本」。後半のスパーズは、シュートを決めた回数よりボールを失った回数の方が多かった[1]。攻撃の終わり方として、これ以上悪い形はない。
2つ目がショットクオリティ45.7%。ESPNの計測で、スパーズの今季全ハーフを通じて最悪の数字でした。つまり「打ったが入らなかった」のではなく、「悪いシュートしか作れなかった」が正しい読み方になる。
Wembanyamaは試合後、こう認めた。「執行力の問題で、ある種の欲張りだった。後半は明らかに、我々の方がハングリーではなかった」[4]。さらに「崩壊は第4Qの前から始まっていた」とも語っています。
この「欲張り(greediness)」を数字に翻訳すると、TO9個とショットクオリティ45.7%になる。リードを守ろうと個人で仕掛け、パスが減り、苦しい1対1のシュートが増える。だからミスが成功FGを上回り、シュートの質が今季最悪まで落ちた。
私が週末に教えている小学生のチームでも、大差で勝っている時ほど同じ崩れ方をします。リードすると、子どもたちは「自分が決めて終わらせたい」とボールを止めてしまう。だから「点差が開いた時ほど、ボールと人を動かそう」と声をかけ続けるのがコーチの仕事で、NBAの頂上決戦でも起きたことの骨格は同じなんです。
G5でスパーズが直すべきことは、だからシンプル。点差がどちらに動いても、ボールを止めずに「いいシュート」を作り続けられるか。Wembanyama自身も「この経験を通じて強くなり、もっと一つになる」方向へ進むと前を向いており[4]、修正は精神論ではなくパスとシュート選択という具体的な行動の話です。
エース対決はここまでほぼ互角に推移してきた。ただG4だけ切り取ると、Brunsonは36点と尻上がりで、WembanyamaはFG9-25と効率を落としている。G5はこの揺り戻しがあるかどうかも見どころ。
そして確率の壁。3勝1敗からの逆転優勝は過去38例中1例だけで、リード側の優勝率は約97.4%です[3]。スパーズが挑むのは、2016年キャバリアーズ以来となるファイナル史上2例目の大仕事になる。
視点を変えると、ニックスはG5に勝てばその瞬間に優勝が決まります。ファイナル史上最大の逆転勝ちの直後だけに、チームの勢いは最高潮だろう。
そしてスパーズにとって嫌なニュースがもう1つ。G4プレビューで私は「鍵は援護シューター陣の3Pが戻るか」と書きましたが、答えはAnunobyの33点(3P 7-9)と残り1.2秒の決勝ティップインでした。援護は、最悪のタイミングで戻ってきた。
こうなるとスパーズはジレンマを抱えます。36点と尻上がりのBrunsonに守備を寄せればAnunobyたち外のシューターが空き、外に付けばBrunsonの1対1が解き放たれる。攻撃の修正だけでなく、「復活した援護+エース」を同時に止める守備の答えも、G5までに用意しなければなりません。
Game 5は現地6月13日(土)20時30分、日本時間6月14日(日)朝9時30分ティップオフ。舞台はサンアントニオのフロスト・バンク・センターで、中継はABC。2-2-1-1-1方式なので、崖っぷちのスパーズに残された切り札がこのホームコートです。
観戦ポイントは2つに絞ります。1つ、点差が動いた時間帯にスパーズのボールが動き続けているか──TOと苦しい1対1の数を目で追う。2つ、WembanyamaのシュートがG4のFG9-25から戻るか。この2つが直って初めて、97.4%の壁に挑む資格が生まれる。
前半76点のチームも、後半30点のチームも、どちらも本物のスパーズでした。日曜の朝、先にコートに現れるのはどちらか──コーヒー片手に確かめてください。
Game 5終了後には、結果を受けたリキャップをお届けする予定です。
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