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戦術分析

5 ── ニックス対スパーズ Finals Game 30-2逆転クラブへの最初の1

公開日2026.06.09編集部 · 5 min
戦術分析NO. 01
5
0-2 COMEBACK · 5 TEAMS

0-2からの逆転優勝は、史上たった5チーム

ニックス対スパーズ(Knicks vs Spurs)のFinals Game 3、スコアは115-111でスパーズ。シリーズはニックスが2勝1敗で、スパーズはようやく最初の1勝をもぎ取った。

舞台はニックスのホーム、マディソン・スクエア・ガーデン(MSG)。試合は最後までもつれ、第4Qに入った時点ではスパーズが92-91とわずか1点リード。そこからニックスは3Pが続けて決まらず得点が止まり、その隙にスパーズが突き放した。終盤の数分で、シリーズの空気が入れ替わった。

ファイナルで0-2から逆転優勝したのは、NBAの歴史で5チームしかいません[1]。スパーズはその「6チーム目」になるための最初の一歩を、相手のホームで踏んだ。今日はその1勝の中身を見ていきます。

この記事のポイント
  • 0-2逆転は史上5回だけ ── スパーズはその仲間入りに必要な「最初の1勝」を敵地で挙げた
  • 最終Qで突き放した ── 1点差で迎えた第4Q、ニックスの3P不発を尻目にWembanyamaとCastleが試合を締めた
  • プレビューの答え合わせ ── 「2-0先行の王道」をスパーズが止めた。ただし王道の確率はまだ覆っていない

背景と文脈:王道を止めにきたスパーズ

このシリーズ、プレビューで私はこう書きました。ファイナルで2-0と先行したチームの優勝率は86.5%[1]。しかもGame 3で勝って3-0にすれば、NBAの歴史で3-0から逆転されたケースは一度もない[2]。つまり、ニックスがこの試合を取れば優勝はほぼ確定、という王道のシナリオだった。

その王道を、スパーズが止めにきた。3-0という"詰み"の一歩手前で踏みとどまり、シリーズを2-1に引き戻した。

ここで正確にしておきたいことがある。スパーズが勝ったとはいえ、ニックスはまだ2-1でリードしている。さっきの「2-0先行は86.5%」という確率そのものが覆ったわけではありません。スパーズはあくまで、最悪のシナリオを一つ消しただけ。ここを混同すると話が大きくなりすぎる。

それでも、この1勝の重みは小さくない。ニックスはプレーオフで13連勝中でした。これはNBA史上2位の長さ[3]。その連勝が、ホームのGame 3で止まった。

クォーター得点(ラインスコア)──前半ニックス、後半スパーズ

Finals Game 3 チーム別クォーター得点
TEAM1Q2Q3Q4Q合計
SASスパーズ33243523115
NYKニックス22422720111

選手スタッツ一覧(box score)──両チームの二桁得点者

Finals Game 3 選手スタッツ(二桁得点者)
選手PTSREBAST3PFGMIN
サンアントニオ・スパーズ
#1Victor Wembanyama32862-411-1839
#5Stephon Castle23552-58-1438
#2Dylan Harper13941-85-1832
#30Julian Champagnie12133-74-927
#4De'Aaron Fox12380-54-1437
#24Devin Vassell11403-43-438
ニューヨーク・ニックス
#11Jalen Brunson32553-511-2535
#8OG Anunoby28513-79-1338
#3Josh Hart16954-76-1035
#32Karl-Anthony Towns11810-24-1038
#00Jordan Clarkson10312-24-713

PTS=得点/REB=リバウンド/AST=アシスト/3P=3P成功-試投/FG=フィールドゴール成功-試投/MIN=出場時間。数字の左は背番号。二桁得点者のみ掲載。出典:ESPN box(gameId 401859965)。

Wembanyamaの32点8リバウンド6アシスト3ブロックは、攻守のどの場面にも顔を出すオールラウンドな数字。とくにFT8-9という終盤のフリースローの確実さが、逃げ切りを支えた。

一方のBrunsonも32点。ただFG11-25と、25本も打ってようやくの32点でした。ここに今日の明暗がにじんでいます。

詳細分析:競り合いを決めた「託せる軸」の差

競った試合の終盤に出るのは、「困った時に誰へ託せるか」です。頼れる軸が1枚いるチームは、苦しい時間でもそこへボールを集めて凌げる。逆に全員の合わせで崩すチームは、その歯車が1つ狂うと途端に止まる。

今日のニックスは、まさに後者でした。3Pを37本も放った、総合力で外から崩すチーム。多彩なシューターが外角を打ち合うのが持ち味で、前半はそれがよく当たって主導権を握りました。ところが1点差で迎えた第4Q、入りから3Pを10本連続で失敗[4]。生命線の外角が止まると、合わせで崩す形そのものが機能しなくなったんです。

対するスパーズは、Wembanyamaという1枚に託せた。第4Qも二桁近い得点でチームを離さず、要所はCastleが残り1分53秒の3Pで111-104、最後は同じCastleが残り6.8秒のフリースロー2本で締めた。軸へボールを集めて凌ぐ、競り合いの王道だった。

ニックスもBrunsonの32点で食い下がり、Anunobyが終盤に3Pを決めて2点差まで詰めた。けれど、時すでに遅し。エース1枚は最後まで戦えても、援護の外角が消えた穴は埋められなかった。

総合力で外から攻めるチームは、全員が当たっている時は手がつけられない。でも外れ始めた時、託せる軸を1枚持っている方が競り合いの最後に残る。スパーズはWembanyama、ニックスは全員の3P──同じ接戦でも、その置き場所が明暗を分けた。指導の現場で何度も見てきた構図が、ファイナルでも出た。

クォーター別に見る「主導権の移動」

このラインスコアは「主導権がどこで動いたか」がそのまま読み取れる。第2Qのニックス42点で前半は試合を握った。だが第3Qのスパーズ35点で潮目が変わり、第4Qのニックス20点で勝負が決した。

つまり試合は、点の取り合いというより「火が点いたチームの入れ替え戦」だった。前半はニックス、後半はスパーズと主導権が移り、最後に火を持っていたのがスパーズだったわけです。

サブトピック:止まった「13連勝」の意味

今日の敗戦で、ニックスのプレーオフ13連勝が途切れた。これはNBA史上2位の連勝記録でした[3]

連勝中のチームは、負け方を忘れがちです。今日のニックスは、第4Qの競った場面で初めて「もう一度立て直す」作業を迫られた。13連勝の間、ほとんど必要のなかった作業だった。

ここからシリーズが長引くなら、この「久々の負け」をどう消化するかがニックスの宿題になる。連勝の勢いは強いが、一敗から立ち直る筋肉は別物。

今後の展望:Game 4は同じMSG

シリーズはまだニックスが2-1でリード。確率の王道(2-0先行の86.5%)も生きたまま。スパーズはあくまで「6チーム目」への第一歩を踏んだだけで、本当の勝負はここからだ。

次のGame 4も同じMSGで行われる。ニックスがホームで連勝ストップの記憶をすぐ上書きできるか。それとも、今日勢いを掴んだスパーズが連取してシリーズを2-2のタイに戻すか。

歴史に名を刻む0-2逆転は、まだ4勝も先の話。でも、その入口の扉をスパーズがこじ開けたのは間違いない。Game 4の終盤、どっちのベンチの声が大きいか──そこに注目して見てみてください。

出典

[1] ファイナルで2-0先行したチームの優勝率86.5%/0-2から逆転優勝は史上5チーム(1969セルティックス・1977ブレイザーズ・2006ヒート・2016キャバリアーズ・2021バックス):Land of Basketball「NBA Finals 2-0 Series Records」/Yahoo Sports
[2] NBAプレーオフで3-0から逆転されたシリーズは史上0回:Wikipedia「List of NBA postseason series sweeps and comebacks」/NBA.com
[3] ニックスのプレーオフ13連勝はNBA史上2位の長さ:NBA.com/ESPN
[4] Game 3の結果・スタッツ(ニックスの3P 13/37・第4Q頭から3P10本連続失敗を含む):ESPN(gameId 401859965)/NBA.com box score/Sports Illustrated
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