ニックス対スパーズ(Knicks vs Spurs)のFinals Game 3、スコアは115-111でスパーズ。シリーズはニックスが2勝1敗で、スパーズはようやく最初の1勝をもぎ取った。
舞台はニックスのホーム、マディソン・スクエア・ガーデン(MSG)。試合は最後までもつれ、第4Qに入った時点ではスパーズが92-91とわずか1点リード。そこからニックスは3Pが続けて決まらず得点が止まり、その隙にスパーズが突き放した。終盤の数分で、シリーズの空気が入れ替わった。
ファイナルで0-2から逆転優勝したのは、NBAの歴史で5チームしかいません[1]。スパーズはその「6チーム目」になるための最初の一歩を、相手のホームで踏んだ。今日はその1勝の中身を見ていきます。
このシリーズ、プレビューで私はこう書きました。ファイナルで2-0と先行したチームの優勝率は86.5%[1]。しかもGame 3で勝って3-0にすれば、NBAの歴史で3-0から逆転されたケースは一度もない[2]。つまり、ニックスがこの試合を取れば優勝はほぼ確定、という王道のシナリオだった。
その王道を、スパーズが止めにきた。3-0という"詰み"の一歩手前で踏みとどまり、シリーズを2-1に引き戻した。
ここで正確にしておきたいことがある。スパーズが勝ったとはいえ、ニックスはまだ2-1でリードしている。さっきの「2-0先行は86.5%」という確率そのものが覆ったわけではありません。スパーズはあくまで、最悪のシナリオを一つ消しただけ。ここを混同すると話が大きくなりすぎる。
それでも、この1勝の重みは小さくない。ニックスはプレーオフで13連勝中でした。これはNBA史上2位の長さ[3]。その連勝が、ホームのGame 3で止まった。
| TEAM | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| SASスパーズ | 33 | 24 | 35 | 23 | 115 |
| NYKニックス | 22 | 42 | 27 | 20 | 111 |
| 選手 | PTS | REB | AST | 3P | FG | MIN |
|---|---|---|---|---|---|---|
| サンアントニオ・スパーズ | ||||||
| #1Victor Wembanyama | 32 | 8 | 6 | 2-4 | 11-18 | 39 |
| #5Stephon Castle | 23 | 5 | 5 | 2-5 | 8-14 | 38 |
| #2Dylan Harper | 13 | 9 | 4 | 1-8 | 5-18 | 32 |
| #30Julian Champagnie | 12 | 1 | 3 | 3-7 | 4-9 | 27 |
| #4De'Aaron Fox | 12 | 3 | 8 | 0-5 | 4-14 | 37 |
| #24Devin Vassell | 11 | 4 | 0 | 3-4 | 3-4 | 38 |
| ニューヨーク・ニックス | ||||||
| #11Jalen Brunson | 32 | 5 | 5 | 3-5 | 11-25 | 35 |
| #8OG Anunoby | 28 | 5 | 1 | 3-7 | 9-13 | 38 |
| #3Josh Hart | 16 | 9 | 5 | 4-7 | 6-10 | 35 |
| #32Karl-Anthony Towns | 11 | 8 | 1 | 0-2 | 4-10 | 38 |
| #00Jordan Clarkson | 10 | 3 | 1 | 2-2 | 4-7 | 13 |
PTS=得点/REB=リバウンド/AST=アシスト/3P=3P成功-試投/FG=フィールドゴール成功-試投/MIN=出場時間。数字の左は背番号。二桁得点者のみ掲載。出典:ESPN box(gameId 401859965)。
Wembanyamaの32点8リバウンド6アシスト3ブロックは、攻守のどの場面にも顔を出すオールラウンドな数字。とくにFT8-9という終盤のフリースローの確実さが、逃げ切りを支えた。
一方のBrunsonも32点。ただFG11-25と、25本も打ってようやくの32点でした。ここに今日の明暗がにじんでいます。
競った試合の終盤に出るのは、「困った時に誰へ託せるか」です。頼れる軸が1枚いるチームは、苦しい時間でもそこへボールを集めて凌げる。逆に全員の合わせで崩すチームは、その歯車が1つ狂うと途端に止まる。
今日のニックスは、まさに後者でした。3Pを37本も放った、総合力で外から崩すチーム。多彩なシューターが外角を打ち合うのが持ち味で、前半はそれがよく当たって主導権を握りました。ところが1点差で迎えた第4Q、入りから3Pを10本連続で失敗[4]。生命線の外角が止まると、合わせで崩す形そのものが機能しなくなったんです。
対するスパーズは、Wembanyamaという1枚に託せた。第4Qも二桁近い得点でチームを離さず、要所はCastleが残り1分53秒の3Pで111-104、最後は同じCastleが残り6.8秒のフリースロー2本で締めた。軸へボールを集めて凌ぐ、競り合いの王道だった。
ニックスもBrunsonの32点で食い下がり、Anunobyが終盤に3Pを決めて2点差まで詰めた。けれど、時すでに遅し。エース1枚は最後まで戦えても、援護の外角が消えた穴は埋められなかった。
総合力で外から攻めるチームは、全員が当たっている時は手がつけられない。でも外れ始めた時、託せる軸を1枚持っている方が競り合いの最後に残る。スパーズはWembanyama、ニックスは全員の3P──同じ接戦でも、その置き場所が明暗を分けた。指導の現場で何度も見てきた構図が、ファイナルでも出た。
このラインスコアは「主導権がどこで動いたか」がそのまま読み取れる。第2Qのニックス42点で前半は試合を握った。だが第3Qのスパーズ35点で潮目が変わり、第4Qのニックス20点で勝負が決した。
つまり試合は、点の取り合いというより「火が点いたチームの入れ替え戦」だった。前半はニックス、後半はスパーズと主導権が移り、最後に火を持っていたのがスパーズだったわけです。
今日の敗戦で、ニックスのプレーオフ13連勝が途切れた。これはNBA史上2位の連勝記録でした[3]。
連勝中のチームは、負け方を忘れがちです。今日のニックスは、第4Qの競った場面で初めて「もう一度立て直す」作業を迫られた。13連勝の間、ほとんど必要のなかった作業だった。
ここからシリーズが長引くなら、この「久々の負け」をどう消化するかがニックスの宿題になる。連勝の勢いは強いが、一敗から立ち直る筋肉は別物。
シリーズはまだニックスが2-1でリード。確率の王道(2-0先行の86.5%)も生きたまま。スパーズはあくまで「6チーム目」への第一歩を踏んだだけで、本当の勝負はここからだ。
次のGame 4も同じMSGで行われる。ニックスがホームで連勝ストップの記憶をすぐ上書きできるか。それとも、今日勢いを掴んだスパーズが連取してシリーズを2-2のタイに戻すか。
歴史に名を刻む0-2逆転は、まだ4勝も先の話。でも、その入口の扉をスパーズがこじ開けたのは間違いない。Game 4の終盤、どっちのベンチの声が大きいか──そこに注目して見てみてください。
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