NBAファイナル、ニックスがアウェイの第1戦を取って、シリーズは1勝0敗。普通なら「リードした側が有利」と思いますよね。ところが第2戦、ニックスはアウェイで約5.5点の"格下"予想(スプレッド=予想点差)[4]なんです。
ニックス対スパーズ(Knicks vs Spurs)のファイナルは、現地6/5(金)にサンアントニオで第2戦を迎えます。1勝0敗でリードしているのに、格下扱い。この一見おかしな状況に、実はちゃんと歴史的な裏付けがあります。
ファイナルの第1戦に勝った側は、シリーズ全体ではだいたい7割が優勝します。でも"アウェイで"第1戦を勝った側に絞ると、優勝率は集計の取り方で47〜50%=ほぼ五分まで落ちる。つまりニックスの1勝0敗は、見た目ほど安全なリードじゃない、という話です。
まずシリーズの状況から。第1戦はニックスが敵地で105-95と勝ち、ホームコートアドバンテージを奪いました。会場ローテーションは第1・第2戦がサンアントニオ、第3・第4戦がニューヨーク。だからスパーズにとって第2戦は、ホームで残された貴重な巻き返しのチャンスなんです。
その第1戦、実はスパーズが前半リードしていました。第3クォーターには最大14点差まで広げる展開。ところがニックスが後半に逆転し、Brunsonが第4クォーターだけで13点、残り37秒に勝ち越し弾を沈めて締めました。スパーズからすれば「勝てた試合を落とした」感覚に近い。
で、第2戦のオッズ(賭けの予想)はどうかというと、現時点でニックスがアウェイで約5.5点の格下予想です。マネーラインもニックス +185/スパーズ -225。1勝0敗でリードしている側が格下、という珍しい構図になっています。
ここがこの記事のいちばん面白いところです。第1戦勝者の優勝率「約70%」という数字、一見すると「ニックス有利」に見えますよね。でも、この70%は平均値。中を割ると、まったく違う2つの顔が出てきます。
ホームで第1戦を勝った側は約78%が優勝します。58回中45回[2]。かなり高い。一方、アウェイで第1戦を勝った側は、19回中9勝=約47%[1]。集計の取り方によっては9勝9敗で50%という数え方もありますが、いずれにせよ"ちょうど半分前後"です。つまり「70%」という平均は、ホーム78%とアウェイ47%を足してならしただけの数字。ニックスが立っているのは、低いほうの47%側なんです。
理由はシンプルで、アウェイで先勝しても、相手の本拠地でもう1試合あるから。会場ローテーション上、第2戦も敵地です。ここで五分に戻されると、リードはあっさり消えます。私はミニバスのコーチを3年やっていますが、子どもたちにもよく言うんです。「相手のコートで1本先取しても、まだ相手のコートでもう1試合あるなら、リードは半分しか喜ぶな」と。アウェイ先勝の数字が47%に沈むのは、まさにこの感覚そのものなんです。
ただし、ここで終わらないのがニックスの怖さです。この47%は「過去のアウェイ先勝チーム全部の平均」。ニックスは平均的なチームじゃありません。プレーオフ12連勝中で、今プレーオフの平均得点差は+19.4[3]。これはファイナル進出時点で、プレーオフ史上最高クラスの数字です。歴史の確率は「平均的な勝者」の話。ニックスがその平均からどれだけ上振れた存在か、という補正をかけて読む必要があります。
一方のスパーズの修正点は、第1戦の中身が教えてくれます。3ポイントを43本撃って11本=25.6%。これは本来35.9%(リーグ14位)のチームなので、明らかな下振れ。本数は撃てているので、確率が平均に戻るだけでもスコアは変わります。問題は本数より"質"と"出どころ"です。
スパーズがホームで五分に戻すための最大の鍵。それはWembanyamaが「リム周り(ゴール下)」を取り返せるか、です。
Wembyは守備では"リムの主"です。彼がコート上にいると、相手のペイント(ゴール下エリア)攻撃の比率が54%から43%まで下がる。相手をリムから遠ざける、いわば門番ですね。ところが第1戦は、攻撃で逆をやられました。自分のシュート21本のうちペイントは9本(43%)。普段は58%がペイントなので、本来いちばん得意な"中"から押し出されてしまった。しかもその9本も4本成功と、得意エリアで当てきれませんでした。
つまり第1戦のWembyは、守備では相手を中から締め出す人なのに、攻撃では自分が中を失った。ここが効率6/21の正体です。ホームの第2戦で、彼がもう一度リム周りを主戦場に取り返せれば、26点の"質"はまるで変わります。量で積んだ26点と、中から崩した26点では、チーム全体に与える効果がまったく違うんです。
もう1つ、ガードの起用も議論になっています。第1戦はHarperが16点・FG6/10と効率よく刻んだ一方、Foxは7点・FG3/13・3ターンオーバーと苦戦。一部メディアは「Harperにもっと託すべき」という声を上げています。ペースの面でも、前半のトランジション(速攻)16回で21点取れていたのが後半は枯れた。速い展開をホームで取り戻せるか、ここも見どころです。
第2戦の見どころは、突き詰めると2つです。1つは、スパーズがホームで「アウェイ先勝は47%」という歴史の側に踏みとどまらせられるか。具体的にはWembyのリム奪還と、3ポイントの確率回復。この2つが戻れば、五分のシリーズに引き戻せます。
もう1つは、ニックスが「自分たちは平均的な47%チームじゃない」と証明できるか。アウェイ連勝で2勝0敗にすれば、シリーズはほぼ手中。ちなみにアウェイで第1戦を勝った側がそのまま優勝したのは、2026年時点で1995年のロケッツ以来ありません。もしニックスがこのまま勝ち切れば、約30年ぶりの達成になります。"達成した"ではなく、あくまで"達成すれば"の話ですが、それくらい珍しい縦軸に挑んでいる、ということです。
怪我の状況も触れておくと、Brunsonは右膝と左足首を抱えながらも「出場の見込み」、Mitchell Robinsonも左小指骨折ながら出場の構え。Wembyは負傷なしで、第1戦の不調はあくまで出来の問題です。正式な欠場者リストは第2戦当日に出ますが、主力は揃いそうです。
私たちはこのファイナルを、プレビュー2本(ニックスの守備32%/スパーズの個人依存+17.3)で「予想」し、第1戦リキャップで「盾が矛を上回り105-95」と答え合わせをしてきました。今回はその続きの「次の予想」です。歴史の47%が示す薄氷の上で、歴史的なニックスはアウェイ連勝へ踏み込めるのか。この数字を頭の片隅に置いて第2戦を見ると、1勝0敗の意味が少しだけ違って見えるはずです。
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