NBAファイナル、第1戦。アウェイのニックスが、スパーズを105-95で下しました。前半に14点のビハインドを背負う苦しい立ち上がりでしたが、後半に逆転。敵地サンアントニオでホームコートアドバンテージを奪い、シリーズを1勝0敗とリードしています。
この試合のいちばんの主役は、皮肉にも「当たらなかったエース」でした。スパーズのビクター・ウェンバンヤマ(以下Wemby)。チーム最多の26点を挙げながら、フィールドゴールは21本中6本(成功率28.6%)、3ポイントは9本中2本。点は積んでも、効率はまるで上がらない夜でした。
私たちはこのファイナルに向けて、2本のプレビューを書いてきました。1本は「ニックス守備の正体は、相手のオープン3を入らせない仕組み(システム)」。もう1本は「スパーズはWembyが出ると+17.3、出ないと-0.3=個人に依存したチーム」。さらに今朝は、その2つを「盾(仕組み)と矛(個人)」としてまとめました。
第1戦は、その答え合わせとして、これ以上ないほどきれいな結果になりました。矛(個人)が止まり、盾(仕組み)が勝った。この記事では、何がそう言わせるのかを、数字で分解していきます。
プレビューで投げかけた問いは、煎じ詰めれば一つです。「仕組みで守るニックスと、個人で当てるスパーズ。最後に立っているのは、どちらの設計か」。第1戦の答えは、はっきりしていました。
スパーズは3ポイントを43本撃ちました。ニックス(36本)より7本も多い。つまり「撃つこと自体」はできた。でも入ったのは11本だけ=26%です。ニックスは43本も撃たせておきながら、確率はきっちり抑え込んだ。これが「撃たせても入らせない=仕組みで消す」守備の中身です。プレビューで挙げた「相手のオープン3を入らせない」設計が、そのまま機能しました。
もう一方の矛は、Wemby個人の6/21に象徴されます。エースが量で撃って当たらないと、個人に依存したチームには次の引き出しが少ない。第4クォーター、スパーズの得点はわずか19点。矛が鈍ったとき、チームごと失速しました。「個人で当てる」設計の弱点が、最も大事な時間帯に出た格好です。
| TEAM | 1Q | 2Q | 3Q | 4Q | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| NYKニックス | 19 | 29 | 28 | 29 | 105 |
| SASスパーズ | 27 | 28 | 21 | 19 | 95 |
| 選手 | PTS | REB | AST | 3P | FG | MIN |
|---|---|---|---|---|---|---|
| ニューヨーク・ニックス(105) | ||||||
| #11Jalen Brunson | 30 | 3 | 2 | 2-9 | 12-31 | 37 |
| #32Karl-Anthony Towns | 18 | 12 | 4 | 0-2 | 7-15 | 34 |
| #8OG Anunoby | 17 | 3 | 0 | 3-6 | 5-12 | 31 |
| #44Landry Shamet | 13 | 1 | 0 | 3-6 | 5-9 | 33 |
| サンアントニオ・スパーズ(95) | ||||||
| #1Victor Wembanyama | 26 | 12 | 2 | 2-9 | 6-21 | 38 |
| #5Stephon Castle | 17 | 8 | 3 | 1-5 | 7-16 | 34 |
| #30Julian Champagnie | 16 | 10 | 1 | 5-10 | 5-11 | 31 |
| #2Dylan Harper | 16 | 8 | 1 | 1-4 | 6-10 | 28 |
PTS=得点/REB=リバウンド/AST=アシスト/3P=3P成功-試投/FG=フィールドゴール成功-試投/MIN=出場時間。数字の左は背番号。二桁得点者のみ掲載。出典:ESPN box score(gameId 401859963)。得点はSI/Yahoo/NBC/CBSでも照合。
表で一番効くのは、得点の「質」の差です。Wembyの26点は6/21(FG28.6%)──たくさん撃って、量で積み上げた26点でした。対するニックスは二桁得点が4人(Brunson 30・Towns 18・Anunoby 17・Shamet 13)に分かれ、3ポイントも複数人で分担。ミニバスでも「エース1人がムリに撃ち続けるチーム」と「何人もが点を取れるチーム」では、相手が粘ってきた夜の強さがまるで違います。今日はその差が、スパーズの第4クォーター19点という失速に、そのまま出ました。
Wembyの6/21は、単に「調子が悪かった」では片づけられません。スパーズの攻撃が、彼個人の出来に強く結びついているからです。エースが量で撃って当たらない日は、チームの得点そのものが細る。今日はそれに加えて、Wembyが6ターンオーバーと、攻撃の起点でもつまずきました。
もう一人の鍵だったJulian Champagnieは、前半だけで3ポイント5本と爆発しましたが、後半は鳴りを潜めました。XファクターのXファクターたるゆえんで、当たれば大きいぶん、外れると当てにできない。個人の出来に振り回されるのが、このチームの強さであり、弱さでもあります。
スタッツの読み方として面白いのは、3ポイントの「撃った本数」です。スパーズは43本撃って26%。これは「オープンは作れているのに入らない」サインでもあります。ニックスの守備は、3ポイントを完全に消すのではなく、撃たせたうえで確率を落とす設計。撃たせた本数(43本)と成功率(26%)のギャップが、その狙いどおりに転がった証拠です。
仕組みのチームにも、最後に勝負を決める人は要ります。今日のニックスは、その役をJalen Brunsonが担いました。30点のうち13点を第4クォーターに集中させ、残り37秒には勝ち越しのジャンプショット。14点差をひっくり返す、まさに主将の仕事でした。試合中に膝と足首を痛めながら、です。
中継各社(ESPN・NBA.com)によれば、このBrunsonの30点は、フランチャイズ史でWillis Reed以来となる「ファイナルGame 1での30点」だそうです。半世紀をまたぐ重みのある数字ですが、私が今日いちばん大きいと思うのは、その30点が"独力"ではなかったこと。Towns 18点12リバウンド、Anunoby 17点、Shamet 13点と、点の出どころが分かれていました。
ミニバスのコーチを3年やっていて、強いチームに共通するのは「誰が点を取ってもいい設計のうえに、最後だけ締める主将がいる」状態です。普段はみんなで分け合い、勝負どころで一人が引き受ける。今日のニックスは、その理想形をファイナルの舞台でやってのけました。盾(仕組み)に、締める主将。これが第1戦の勝因です。
アウェイで第1戦を取ったニックスは、ホームコートアドバンテージを奪いました。逆にスパーズは、ホームの第2戦(現地6/5・金)を落とすと0勝2敗で敵地ニューヨークへ向かうことになり、一気に苦しくなります。負けられない一戦です。
見るべきは2つ。1つは、Wembyの効率が戻るか。6/21は確率的に「次は上がる」と読むのが自然で、26点取れる選手が普通に当て出したら、スパーズの絵はがらりと変わります。もう1つは、スパーズが「個人」に"仕組み"を足せるか。43本の3ポイントを、Wemby頼みではなく全員で分担できれば、26%は上向きます。プレビューから続く「矛は、仕組みを覚えられるか」という問いが、第2戦の見どころです。
今朝のプレビューで、私たちはこのシリーズを「盾(仕組み)と矛(個人)」という見立てで整理しました。第1戦は、その見立てのとおりに転がった夜です。矛が止まり、盾が立った。
もちろん、ファイナルは7戦のシリーズ。矛が一度鈍ったくらいで終わる相手ではありません。次にWembyの矛が戻ったとき、ニックスの盾はそれでも折れないのか。答え合わせは、まだ始まったばかりです。第2戦、現地6/5。続きを一緒に見届けましょう。
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